artjunkie 2025年4月24日

ハン・ネフケンス財団との共同プロジェクト シャハナ・ラジャニ

Collaborative project with the Han Nefkens Foundation: Shahana Rajani 開催予定

イベント詳細

東京都現代美術館が2025年に始動する新たな企画シリーズ「MOT Plus」では、従来の展覧会形式にとらわれない、革新的なアートプロジェクトが展開されます。その一環として開催される《ハン・ネフケンス財団との共同プロジェクト シャハナ・ラジャニ》は、南アジアを代表する若手アーティストによる映像インスタレーションを通じて、グローバルな問題と個人の物語を結びつける展覧会です。

ハン・ネフケンス財団は、バルセロナを拠点に世界各地のアート機関と連携し、映像表現を中心とするアーティストの支援を行う非営利団体。2023年には東京都現代美術館を含む世界6都市の美術館と協力し、「南アジア・ビデオアート・プロダクション・アワード」を創設。このたびその受賞者として選出されたのが、パキスタンを拠点に活動するシャハナ・ラジャニです。

ラジャニは、軍事やインフラ開発によって破壊された風景や、そこで生きる人々の記憶を丁寧に掘り起こし、映像を中心とした多様なメディアで表現してきたアーティストです。とりわけ、コミュニティとの協働によって「失われつつあるもの」を再構築し、可視化する姿勢が注目を集めています。

本展で発表される新作《回復のための四つの行為》は、インダス・デルタにおける環境破壊の影響で故郷を離れざるを得なかった漁師一家を追ったドキュメンタリー映像に基づいています。彼らが記憶を手繰るようにかつての風景を壁画として描き出す行為を、イスラーム文化における護符(タリスマン)の精神と重ねながら、芸術による“回復”のプロセスとして捉えています。

インスタレーションは3つのスクリーンで構成され、観客は時間と空間を越えて、過去と現在、喪失と回復の狭間に身を置くことになります。消えた風景とそこに宿る人々の記憶を見つめ直す、まさに瞑想的な体験が可能となる展示です。

シャハナ・ラジャニはまた、ザフラ・マルカニと共に設立した「カラチ・ラジャミア」において、土地と水をめぐる抵抗の歴史に基づいた教育実践にも携わっています。その活動は、芸術と社会実践を結びつけるラディカルな教育の可能性を示すものでもあります。

国境や制度にとらわれず、芸術の根源的な力を通じて人と土地、記憶と未来をつなぎ直すラジャニの作品。無料で鑑賞できるこの展覧会は、現代社会におけるアートの新たな役割を示唆する、静かで強い声となるでしょう。

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イベント情報

開催期間

2025/04/29 - 2025/06/29

入場料

無料
※詳しくは公式サイトにてご確認ください。